保育園の「意向調査」とは?目的・時期・伝え方まで園と保育士の視点で解説

「意向調査」は、園の運営方針と職員の希望をすり合わせる大切な機会です。園にとっては人材配置や定着の改善につながり、保育士にとっては自分の思いや働き方を前向きに伝えるチャンスとなります。本記事では、園と保育士それぞれの視点から、目的・実施時期・伝え方の工夫を解説します。

保育園の「意向調査」とは?

保育園における意向調査は、職員の働き方やキャリアの希望を園が確認する仕組みです。単なるアンケートではなく、人材配置や定着の課題を把握し、保育士にとっては希望を伝える大切な場となります。

意向調査の目的

最大の目的は、職員の働きやすさとやりがいを守ることです。厚労省の指針でも、キャリア形成や勤務環境の改善は定着率向上に直結するとされています。園側が意見を聞き入れる姿勢を示すことは、信頼関係の強化にもつながります。

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意向調査が行われる時期

多くの園では、年度末や新年度前後に調査を行います。クラス編成や人員配置を決めるタイミングだからです。ライフイベントに配慮して年度途中に追加実施する園もあり、職員が意見を伝えやすい工夫が広がっています。

意向調査の実施方法

意向調査は主に「アンケート」と「面談」で行われます。アンケートでは選択式や自由記述を用い、職員の率直な意見を拾いやすくします。一方で園長や主任との面談は、個別事情を深く聞き取れる点がメリットです。
近年はICTを活用し、匿名入力やオンライン回答を取り入れる園も増えております。ある園ではLINEを利用した入力フォームを導入したところ、回答率が9割を超えた事例もあります。匿名性や手軽さが担保されることで、職員が安心して意見を伝えられる仕組みが広がっています。

意向調査で伝えるときのポイント

意向調査は、ただ要望を並べる場ではなく、園と自分の働き方を前向きにすり合わせる機会です。ここでは回答の際に意識したいポイントを整理します。

ポジティブな表現に変換して伝える

「残業が多くてつらい」と書くより、「もう少し業務に集中できる環境で力を発揮したい」と伝える方が、園側も受け止めやすく改善策につなげやすくなります。心理学の「フレーミング効果」にもある通り、同じ内容でも肯定的に表現することで相手の印象は大きく変わります。

十文字学園女子大学:フレーミング効果 | 意思決定・信念に関する認知バイアス

希望する時期や内容を具体的に示す

「いずれ異動したい」より「来年度から乳児クラスで経験を積みたい」と具体的に伝える方が、園の計画に反映されやすくなります。実際にある園では、年度単位での異動希望を明示したことで配置計画がスムーズに進みました。

感謝の気持ちを忘れずに伝える

要望だけでなく「これまでサポートいただき感謝しています」と添えることで、伝え方が柔らかくなり、対話の雰囲気も良くなります。感謝表現は組織心理学でも「関係の質を高める要素」とされ、職場全体の信頼関係強化につながります。

人材研究所:組織心理学とは 組織心理学の具体的な内容と応用方法

成長のための前向きな退職・異動理由

意向調査では、退職や異動の希望を伝える場合もあります。その際に大切なのは「ネガティブな不満」ではなく「成長のための前向きな理由」として表現することです。園にとっても本人にとっても、納得感のあるキャリア形成につながります。

異なる環境で経験を積みたい

「もっと幅広い年齢の子どもと関わりたい」「地域性の違う園で経験を積みたい」といった理由は、保育士としてのスキルアップにつながります。実際に異動を経た保育士が、その経験を活かして後に主任や園長になった事例も多く報告されています。

主任・園長など管理職を目指す/専門性を高めたい

「将来は主任や園長を目指したい」「障がい児保育や食育など専門性を深めたい」といった希望は、園側にとっても人材育成の計画に活かせます。厚生労働省が示す「保育士キャリアアップ研修」も、こうした専門性の向上を支援する制度のひとつです。

厚生労働省:保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ

長く続けられる職場環境を探している

「体調や家庭との両立を考え、無理のない勤務体制を望む」といった表現も前向きな理由のひとつです。保育士の離職理由の多くは働き方の不一致であり、早めに伝えることで双方にとって納得できる選択ができます。

厚生労働省:保育士の現状と主な取組

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得意分野を伸ばせる環境を探したい

「音楽や造形など自分の得意分野をより活かしたい」といった理由も立派なキャリア形成です。心理学的にも「強みを活かせる環境」で働くことはモチベーションの持続につながるとされます(ポジティブ心理学)。

JPPA:ポジティブ心理学とは

【保育士側】意向調査前にやっておくこと

意向調査は、自分の働き方を見直し、園と前向きに対話するチャンスです。そのためには事前準備が欠かせません。ここでは、調査に臨む前に整理しておきたいポイントを紹介します。

自分の希望や働き方を整理する

まずは「どのクラスで働きたいか」「どのくらいの勤務時間が理想か」など、自分の希望を書き出しましょう。キャリアアンカー理論でも、自分の価値観や優先順位を把握することが長期的なキャリア形成に有効とされています。

前向きに伝えられる理由を考える

不満ではなく「スキルを伸ばしたい」「保護者対応をもっと学びたい」など前向きな理由に言い換えて準備しておくと、園も受け止めやすくなります。

異動や変更を望む時期を明確にする

「いずれ」ではなく「来年度から」「半年後から」など、具体的な時期を明示することで、園の人員配置計画に反映されやすくなります。

改善してほしい点をまとめておく

日々の業務で感じる課題を整理し、改善提案として伝えられると建設的です。例えば「ICT導入で記録業務を効率化したい」と具体的に示すと、園にとっても検討材料になります。

意向調査の回答方法を確認する

紙、オンライン、面談など、園によって方法は異なります。事前に確認しておくことで、落ち着いて回答でき、自分の意向をしっかり伝えられます。

【園運営側】意向調査を進めるときの工夫

意向調査は、保育士の希望を聞くだけでなく、園の運営改善や定着率向上につなげる重要な取り組みです。園運営側が工夫を凝らすことで、調査の質と信頼性が高まります。

意向調査の内容を明確にする

「異動希望」「勤務時間」「キャリア目標」など、聞きたい項目を明確にすると回答が具体的になります。厚生労働省の「保育士確保指針」でも、キャリア形成に関する質問項目の充実が推奨されています。

厚生労働省の「保育士の確保・資質向上等に関する指針」では、保育士が働きながらキャリアアップできる環境整備や研修機会の確保が重要とされています。そのため、意向調査の中でキャリア形成に関する項目を設け、職員の希望や学びの方向性を把握することは、国の方針にも沿った取り組みと言えます

厚生労働省:保育士の確保・資質向上等

事前準備をしっかり行う

調査票の配布方法や回答期限を決めておくことで、混乱を防ぎます。また匿名性を確保するかどうかを明示することで、率直な回答を得やすくなります。ICTを活用した入力フォームを導入する園も増えており、回答率向上に効果的です。

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面談での伝え方の工夫

調査後の面談では「傾聴」の姿勢が欠かせません。心理学の「アクティブリスニング」の手法を取り入れ、相手の発言を復唱しながら理解を深めることで、職員は安心して意見を伝えられます。ある園ではこの方法を取り入れた結果、調査後の満足度が大きく向上しました。

まとめ:意向調査を活かして働きやすい園づくりを

意向調査は、保育士の声を園の運営に反映させる大切な仕組みです。職員は自分の希望を前向きに伝えることでキャリアを描きやすくなり、園は離職を防ぎ、安定した人材配置につなげられます。

ただし、実際には「十分に人材が確保できない」「採用活動が追いつかない」といった課題を抱える園も少なくありません。そんなときに役立つのが、チポーレのLINEを活用した採用支援ツール「採用担当らいん君」 です。応募者とのやり取りを自動化し、情報を一元管理できるため、忙しい園長や主任の負担を減らしながら効率的に人材を確保できます。

意向調査を通じて見えた職員の声を改善につなげ、さらに採用の仕組みを整えることで、働きやすい園づくりを進めていきましょう。

詳しくは、採用担当らいん君|公式サイトをご覧ください。


執筆者情報

上杉 功(うえすぎ いさお)株式会社チポーレ代表取締役。

保育士の採用や園児集客をサポートするサービスを展開中。保育士や園長の負担軽減と保育の質の向上を目指し、現場に即したサービスや情報発信を日々行っております。