保育園ICT化のメリット・デメリットとは?補助金や選び方のポイントも解説!

近年、保育現場で「ICT化」という言葉を耳にする機会が増えました。保育士の業務負担軽減や保育の質向上を目的に、国も推進しているこの取り組みですが、「具体的に何がどう変わるのか」「導入は難しくないか」といった疑問や不安をお持ちの園関係者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、保育園におけるICT化の基本から、導入のメリット・デメリット、システムの選び方、活用できる補助金まで、網羅的に分かりやすく解説します。

保育園のICT化とは?

保育園のICT化とは、これまで手書きや電話などで行っていた業務を、パソコンやタブレット、スマートフォンなどの情報通信技術(ICT)を活用してデジタル化し、効率化を図る取り組みです。 保育業務支援システムとも呼ばれ、多くの保育園やこども園で導入が進んでいます。

保育士の業務負担を軽減するシステム

保育士の仕事は、子どもたちの保育だけでなく、指導計画や保育日誌の作成、保護者への連絡、登降園の記録、保育料の計算など、多岐にわたる事務作業を伴います。ICTシステムは、これらの煩雑な業務を自動化・簡略化し、保育士の負担を大幅に軽減することが可能です。その結果、保育士は子どもたち一人ひとりと向き合う時間をより多く確保できるようになり、心にゆとりを持って保育に専念できる環境が整います。

政府も推進する保育現場のDX

保育士不足や労働環境の改善は、保育業界全体の大きな課題です。こうした背景から、国も保育現場のICT化を重要な施策と位置づけ、補助金制度を設けるなどして導入を後押ししています。 ICTの活用は、単なる業務効率化に留まらず、働き方改革の推進や保育の質の向上に不可欠な「保育現場のDX(デジタル・トランスフォーメーション)」として期待されています。

導入主体目的具体的な取り組み
国・自治体保育士の業務負担軽減、労働環境改善、保育の質の向上ICT化推進補助金の交付
保育施設業務効率化、職員の定着、保護者満足度の向上保育ICTシステムの導入、Wi-Fi環境の整備
保護者利便性の向上、園との円滑なコミュニケーションスマートフォンアプリ等での欠席連絡、お知らせの確認

保育園にICTを導入する5つのメリット

ICTシステムを導入することで、保育園、保育士、そして保護者にとって多くのメリットが生まれます。ここでは主な5つのメリットを紹介します。

事務作業の大幅な効率化と時間短縮

保育ICTシステムの最大のメリットは、事務作業の効率化です。 例えば、登降園時間を自動で記録し、延長保育料を自動計算する機能や、指導計画や保育日誌をテンプレートに沿って簡単に入力できる機能があります。 これにより、手書きによる転記ミスや計算間違いを防ぎ、書類作成にかかる時間を大幅に短縮できます。

保育士の労働環境改善と離職率低下

事務作業の負担が減ることで、保育士の残業時間や持ち帰り業務の削減につながります。 労働環境が改善されることは、心身の健康を保ち、仕事への満足度を高める上で非常に重要です。結果として、保育士の離職率低下や定着率向上に貢献することが期待できます。

保護者とのコミュニケーション円滑化

スマートフォンのアプリなどを通じて、保護者への一斉連絡やお知らせ配信が簡単に行えるようになります。 これまで電話連絡が中心だった欠席や遅刻の連絡も、保護者は都合の良い時間にアプリから送信可能です。保育士は朝の忙しい時間帯の電話対応に追われることがなくなります。 また、写真付きで園での子どもの様子を共有することで、保護者の安心感を高め、より円滑なコミュニケーションが実現します。

保育の質の向上に繋がる

ICTの活用によって生まれた時間は、保育の準備や研修、そして何より子どもたちと直接関わる時間にあてることができます。 職員間で園児の情報がリアルタイムに共有されることで、一人ひとりの発達や体調の変化に応じた、よりきめ細やかな保育を提供できるようになるでしょう。 これは、保育の質の向上という最も大切な目的につながります。

採用活動におけるアピールポイントになる

保育士の求人において、「ICTを導入し、業務効率化を進めている」ことは、働きやすい職場環境をアピールする大きな強みとなります。 先進的な取り組みを行っている園として、他の園との差別化を図ることができ、人材確保の面でも有利に働く可能性があります。

対象者メリットの具体例
保育園(運営側)業務効率化によるコスト削減、提出書類作成の簡素化、人材の定着。
保育士事務作業の負担軽減、残業削減、子どもと向き合う時間の増加。
保護者連絡の利便性向上、園からの情報入手の確実性、子どもの様子の可視化による安心感。

保育園ICT導入のデメリットと注意点

多くのメリットがある一方で、ICT導入にはいくつかの注意点も存在します。事前に把握し、対策を講じることが成功の鍵です。

システム導入・運用のためのコスト発生

ICTシステムの導入には、初期費用や月額の利用料がかかります。 また、園内のネットワーク環境を整備するための費用(Wi-Fi設置など)や、パソコン・タブレットといった機器の購入費用も必要になる場合があります。 後述する補助金制度をうまく活用し、費用計画を立てることが重要です。

職員や保護者のITリテラシーへの配慮

職員の中には、パソコンやスマートフォンの操作に不慣れな方もいるかもしれません。 同様に、保護者の中にもアプリの利用に抵抗を感じる方がいる可能性があります。 導入前に丁寧な説明会や研修会を実施し、誰でも直感的に使えるような操作性の高いシステムを選ぶなどの配慮が求められます。

安定したインターネット環境の整備が必要

クラウド型のICTシステムは、インターネットを介して利用するのが一般的です。 そのため、園内のどこでも快適にシステムを利用できるよう、安定したWi-Fi環境の整備が不可欠です。通信速度が遅い、電波が届きにくい場所があるといった状況では、かえって業務効率が低下してしまう恐れがあります。

情報セキュリティ対策の徹底

ICTシステムでは、園児や保護者、職員の個人情報という非常に重要なデータを取り扱います。 そのため、システムのセキュリティ対策が万全であるかを確認することは極めて重要です。 通信の暗号化、アクセス制限機能、データセンターの安全性など、どのような対策が講じられているかを事前にしっかりと確認し、保護者にも説明できるようにしておく必要があります。

デメリット・注意点対策
コスト補助金の活用、費用対効果の検討、複数のシステムの見積もり比較。
ITリテラシー事前研修の実施、マニュアルの整備、簡単で使いやすいシステムの選定。
ネット環境安定したWi-Fi環境の構築、専門業者への相談。
セキュリティ提供事業者のセキュリティ対策の確認、アクセス権限の設定、職員への教育。

保育ICTシステムの主な機能

保育ICTシステムには様々な機能が搭載されています。ここでは、多くのシステムに共通する主な機能を紹介します。

登降園管理機能

タブレットやICカードを使って、園児の登園・降園時間を簡単に記録する機能です。 保護者が操作するだけで打刻が完了するため、保育士が手作業で記録する必要がありません。 記録されたデータは自動で集計され、出欠簿の作成や延長保育料の計算に活用できます。

保護者への連絡機能

園からのお知らせを保護者のスマートフォンアプリへ一斉に配信したり、欠席・遅刻などの連絡をアプリで受け付けたりする機能です。 これにより、電話対応や紙のおたよりを印刷・配布する手間が大幅に削減されます。 既読確認ができるシステムもあり、連絡の伝達漏れを防ぐ効果も期待できます。

指導計画・保育日誌の作成支援機能

指導要録や保育日誌、週案・月案といった書類を、システム上のテンプレートを用いて作成できる機能です。 過去の計画を呼び出して活用したり、園児情報などの基本データが自動で反映されたりするため、書類作成業務が格段に楽になります。

職員の勤怠・シフト管理機能

職員の出退勤時刻を打刻し、勤務時間を自動で集計する機能です。 また、職員の希望や配置基準を考慮した上で、シフトを自動で作成するシステムもあります。 これにより、労務管理の負担が軽減され、働き方改革にも繋がります。

保育料などの請求管理機能

登降園の記録データと連携し、基本保育料や延長保育料、給食費などを自動で計算し、請求書を発行する機能です。 複雑な計算をシステムに任せることで、ミスを防ぎ、請求業務の負担を大きく減らすことができます。

園児の健康・発達記録の管理機能

園児のアレルギー情報や既往歴、日々の検温結果、身長・体重といった成長記録などを一元管理する機能です。 職員間で園児の状態をリアルタイムに共有できるため、緊急時の迅速な対応や、一人ひとりの発達に合わせた適切なケアに役立ちます。

機能業務内容導入による変化
登降園管理出欠の記録、延長保育料計算手作業での記録・計算が不要になり、自動化される
保護者連絡お知らせ配布、欠席連絡の電話対応アプリで一斉配信・受付が可能になり、時間と手間を削減
書類作成指導計画、保育日誌の手書き作成テンプレート活用で入力が簡便化、転記作業が不要に
請求管理保育料等の手計算、請求書作成データ連携で自動計算、ミスのない請求書を簡単に発行

【失敗しない】保育ICTシステムの選び方5つのポイント

数多くのICTシステムの中から、自園に最適なものを選ぶためには、いくつかの重要なポイントがあります。

導入目的を明確にする

「なぜICTを導入するのか」という目的を明確にすることが最も重要です。 「とにかく事務作業を減らしたい」「保護者との連携を強化したい」「職員の労務管理を楽にしたい」など、園が抱える課題を洗い出し、それを解決できるシステムはどれかを考えましょう。 目的が曖昧なまま導入すると、使われない機能が多くなり、コストだけがかかってしまう事態になりかねません。

職員と保護者にとっての使いやすさ

システムを実際に使うのは、現場の職員と保護者です。 パソコンが苦手な人でも直感的に操作できるか、画面は見やすいか、といった「使いやすさ」は非常に重要な選定基準です。 無料のトライアル期間などを利用して、実際に操作感を試してみることをお勧めします。

園の課題を解決できる機能が揃っているか

自園の課題解決に必要な機能が、標準で搭載されているか、またはオプションで追加できるかを確認しましょう。 将来的に使いたい機能も想定し、システムの拡張性も見ておくと良いでしょう。ただし、多機能すぎても使いこなせず、かえって業務が煩雑になることもあるため、自園にとって本当に必要な機能を慎重に見極めることが大切です。

信頼できるセキュリティ対策

前述の通り、個人情報を扱う上でセキュリティは最重要項目です。 データの暗号化、不正アクセス防止策、プライバシーマークの取得状況など、提供事業者がどのようなセキュリティ対策を講じているかを必ず確認しましょう。 導入前に、保護者へも自信を持って安全性を説明できるレベルのシステムを選ぶべきです。

導入後のサポート体制

システムの導入時だけでなく、運用開始後に出てくる疑問やトラブルに迅速に対応してくれるかも重要なポイントです。電話やメールでの問い合わせ窓口はあるか、操作方法の研修会などを実施してくれるかなど、導入後のサポート体制が充実している事業者を選ぶと安心です。

選定ポイント確認すべきこと
目的の明確化園の最優先課題は何か? その課題を解決できるか?
使いやすさ職員や保護者が直感的に操作できるか? 無料トライアルで試せるか?
機能の範囲必要な機能は揃っているか? 過剰な機能はないか?
セキュリティ個人情報を守る対策は万全か? 保護者に説明できるか?
サポート体制導入後の問い合わせやトラブルにすぐ対応してくれるか?

保育園のICT化に活用できる補助金制度

保育園のICT化を支援するため、国や自治体による補助金制度が設けられています。導入コストを抑えるために、積極的に活用を検討しましょう。

保育所等におけるICT化推進補助金

厚生労働省が主体となって実施している補助金で、保育業務支援システムの導入費用を補助するものです。 ソフトウェアの利用料だけでなく、タブレット端末等の購入費用も対象となる場合があります。補助対象や補助額は年度や自治体によって異なるため、まずは園が所在する市区町村の担当部署に問い合わせてみましょう。

自治体独自の補助金制度も確認

国の補助金とは別に、都道府県や市区町村が独自にICT化を支援する補助金制度を設けている場合があります。国の制度と併用できるケースもあるため、必ず自治体のウェブサイトを確認したり、担当窓口に相談したりすることが重要です。

【令和7年度│最新版】保育園のICT補助金とは?対象や申請の流れを解説 – 株式会社チポーレ – お役立ち情報

まとめ | ICT化で実現する、持続可能な園運営

保育園のICT化は、単なる業務のデジタル化ではありません。それは、保育士の負担を軽減して働きやすい環境を作り、その結果として保育の質を高め、子どもたちの健やかな育ちを支えるための重要な投資です。
導入にはコストや準備が必要ですが、国や自治体の補助金制度も充実しており、多くのメリットが期待できます。この記事で紹介したポイントを参考に、自園の課題を明確にし、最適なICTシステムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

さらに、園の運営を支える大きな要素のひとつが「人材確保」です。ICTで業務の効率化を進めると同時に、採用活動をスムーズにする仕組みも整えることが大切です。そこでおすすめしたいのが、採用担当らいん君」。LINEを活用した採用支援サービスで、求職者とのコミュニケーションを効率化し、園の魅力をわかりやすく伝えることができます。

ICT化とあわせて採用の仕組みも整えることで、働きやすい環境づくりと人材確保の両面から、より安定した園運営につながります。

詳しくは、採用担当らいん君|公式サイトをご覧ください。


ICT化と人材確保で実現する、持続可能な園運営


執筆者情報

上杉 功(うえすぎ いさお)株式会社チポーレ代表取締役。

保育士の採用や園児集客をサポートするサービスを展開中。保育士や園長の負担軽減と保育の質の向上を目指し、現場に即したサービスや情報発信を日々行っております。