【2025年版】最新の保育士配置基準とは?変更点と加算措置目的を解説!
保育園で働く保育士の人数は、子どもの安全と保育の質を確保するために「配置基準」として定められています。2024年には76年ぶりに4・5歳児の配置基準が見直され、2025年度からは1歳児クラスの配置改善に向けた新たな加算措置が導入されます。
本記事では、2025年度の保育士配置基準の最新情報、特に1歳児配置改善加算の詳細と申請条件について、わかりやすく解説します。
保育士配置基準とは?
保育士配置基準とは、「保育施設で子どもを安全に保育するために必要な保育士の最低人数」を定めたルールです。この基準は1948年に制定された児童福祉法に基づいており、子どもの年齢や施設の種類によって細かく定められています。
保育士配置基準は、保育の「質」と「安全」を守るための最低ラインとして重要な役割を果たしています。
この配置基準は、全国どこでも守らなければならない国の最低基準で、違反すると、監査や行政指導の対象となり、最終的には園を運営できないなどのペナルティを受ける可能性もあります。
保育現場では長年、「現行の配置基準では十分な保育ができない」という声が上がっており、「保育士の数が足りない」「保育の質が確保できない」などの問題が指摘されてきました。こうした背景から、配置基準の見直しがついに実現することになったのです。
2025年度の保育士配置基準改正の全体像
2025年度の保育士配置基準改正は、2023年に策定された「こども未来戦略」に基づいて段階的に進められています。この戦略では、「保育人材の確保」と「保育の質の向上」を目指し、配置基準の改善が重要施策として位置づけられています。
2025年度以降の配置基準について、年齢別にまとめると以下のようになります。
子どもの年齢 | 改正前の基準 | 2025年度の基準 | 備考 |
0歳児 | 3:1 | 3:1 | 変更なし |
1歳児 | 6:1 | 6:1(加算措置で5:1) | 加算措置で改善 |
2歳児 | 6:1 | 6:1 | 変更なし |
3歳児 | 20:1 | 15:1 | 2024年度に改正済み |
4・5歳児 | 30:1 | 25:1 | 2024年度に改正済み |
2024年に改正された4・5歳児と3歳児の配置基準
2024年度には、76年ぶりとなる配置基準の見直しが実現し、4・5歳児の配置基準が「30人に対して保育士1人」から「25人に対して保育士1人」へと改善されました。同時に、3歳児についても「20人に対して保育士1人」から「15人に対して保育士1人」へと改善されています。
この改正は、配置基準の歴史の中でも大きな転換点となりました。1948年の制度発足以来、一度も見直されてこなかった4・5歳児の配置基準が改善されたことで、保育現場の負担軽減や保育の質向上につながると期待されています。
2025年から始まる1歳児の配置基準改善
2025年度からは、1歳児の配置基準改善に向けた新たな取り組みがスタートします。
具体的には現行の「保育士1人に対して1歳児6人」という配置基準はそのままに、「保育士1人に対して1歳児5人以上」に改善した施設に対して加算措置を設ける形で推進されます。
こども未来戦略では、「2025年度以降、1歳児について、保育人材の確保等の関連する施策との関係も踏まえつつ、加速化プラン期間中の早期に6対1から5対1への改善を進める」としており、まずは加算措置からスタートし、将来的には配置基準そのものの改正を目指す方針です。
1歳児の配置基準を最低基準の改正ではなく加算措置にした理由について、こども家庭庁は「保育士不足により人材の確保が難しいこと」を挙げています。
現状でも保育士の確保が難しい中で、いきなり最低基準を引き上げると、基準を満たせない施設が出る恐れがあるためです。
まずは加算措置によって5:1配置に取り組む施設を増やし、徐々に保育現場全体の配置改善を進めていく段階的なアプローチが採用されています。
1歳児配置改善加算について
2025年度に新設される「1歳児配置改善加算」は、現行の「園児6人:保育士1人」という配置基準から、より手厚い「園児5人:保育士1人以上」の配置に改善している施設に対して、加算を行うものです。
この加算によって、保育士1人あたりが担当する1歳児の数が減少することで、より丁寧な保育が可能になり、子どもの安全確保や発達支援の充実が期待されています。
また、保育士の負担軽減にもつながるとされています。 加算額は、「6:1の配置に要する経費」と「5:1の配置に要する経費」との差額に相当する金額とされています。つまり、追加で配置する保育士の人件費相当分が加算されることになります。
加算を受けるための3つの条件
1歳児配置改善加算を受けるためには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。これらの条件は、単に人数だけでなく、保育の質の確保も重視した設計になっています。
- 処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲのすべてを取得していること
保育士の処遇改善に取り組んでいることが前提条件です。これらの加算は保育士の給与改善を目的としたもので、2025年度から一本化される予定ですが、申請にあたっては従来のⅠ・Ⅱ・Ⅲすべての取得が条件になります。
- ICTシステムの活用を進めていること(条件あり)
業務効率化と保育の質向上のため、ICTシステムの活用が条件となっています。
具体的には「登降園管理」に加えて、「計画・記録」「保護者連絡」「キャッシュレス決済」の3機能から1つ以上、合計2つ以上の機能を活用していることが必要です。
- 職員の平均経験年数が10年以上であること
保育の質を確保するため、施設の職員の平均経験年数が10年以上であることが条件となっています。経験豊富な職員がいることで、質の高い保育が提供できると考えられています。
これらの条件は、単に配置人数を増やすだけでなく、保育の質や職員の処遇改善、業務の効率化などを総合的に進めることを促す内容になっています。そのため、現時点でこれらの条件をすべて満たしている施設は限られるかもしれませんが、今後処遇改善等加算の一本化やICTシステム導入の普及により、加算を受けられる施設は増えていくことが期待されています。
ICT活用要件の具体的内容
1歳児配置改善加算を受けるための条件の一つである「ICTシステムの活用」について、具体的な要件を解説します。
加算を受けるためには、以下のICT機能のうち、「①登降園管理」は必須とし、②~④から最低1つ以上、合計2つ以上の機能を活用していることが条件となっています。
保育園・幼稚園デジタル管理システム比較表
システム名 | 概要 | 主な機能 | メリット |
➀登降園管理(必須) | 園児の出欠確認やお迎え管理を電子化するシステム | ・タブレット/ICカードでの登降園記録・出欠確認・お迎え時間の把握 | ・集計作業の時間短縮・正確性の向上・紙の出席簿からの移行 |
➁計画・記録 | 保育計画や日誌、児童票などの記録をデジタル化するシステム | ・指導計画のデジタル化・日々の記録入力・児童票管理 | ・作業時間の削減・過去記録の検索性向上・データ共有の容易さ |
➂保護者連絡 | 保護者とのコミュニケーションをデジタル化するシステム | ・お便り配信・デジタル連絡帳・情報共有 | ・即時性の向上・双方向コミュニケーション・紙の配布物削減 |
➃キャッシュレス決済 | 各種支払いをデジタル化するシステム | ・保育料支払い・延長保育料決済・教材費などの支払い | ・集金業務の負担軽減・未納管理の効率化・クレジットカード/アプリ決済 |
ICTシステムを導入することで、保育士の事務作業時間が削減され、本来の保育業務に集中できる環境づくりが進むことが期待されています。特に「登降園管理」は必須要件となっているため、まだ導入していない施設では、加算取得に向けて優先的に検討する必要があるでしょう。
施設別の保育士配置基準一覧(2025年度版)
保育施設の種類によって配置基準が異なります。2025年度における主な施設種別ごとの保育士配置基準を整理しました。
認可保育園の配置基準
認可保育園では、以下の年齢別配置基準が適用されます。
子どもの年齢 | 配置基準(園児数:保育士数) | 2025年度の状況 |
0歳児 | 3:1 | 変更なし |
1歳児 | 6:1 | 加算措置で5:1に改善可能 |
2歳児 | 6:1 | 変更なし |
3歳児 | 15:1 | 2024年度に改正済み(旧20:1) |
4・5歳児 | 25:1 | 2024年度に改正済み(旧30:1) |
※認可保育園では、必ず2名以上の保育士配置が必要です。
認可外保育施設の配置基準
認可外保育施設の場合、保育時間によって配置基準が異なります。
保育時間 | 配置基準(園児数:保育士数) | 備考 |
11時間以内 | 認可保育園と同じ | 0歳児3:1、1歳児6:1(加算で5:1)、2歳児6:1、3歳児15:1、4・5歳児25:1 |
11時間超 | 常時2名以上 | 保育者の1/3以上は保育士または看護師資格が必要 |
幼保連携型認定こども園の配置基準
幼保連携型認定こども園は、幼稚園と保育所の機能を併せ持ち、0歳から小学校就学前までの一貫した教育及び保育を提供する施設です。
幼保連携型認定こども園の職員配置基準は、基本的に保育所と同様の配置基準が適用されます。2025年度における年齢別の配置基準は以下の通りです。 ※3歳以上の子どもの教育時間については、学級編成及び保育教諭の配置が必要です。
子どもの年齢 | 配置基準(園児数:保育士数) | 2025年度の状況 |
0歳児 | 3:1 | 変更なし |
1歳児 | 6:1 | 加算措置で5:1に改善可能 |
2歳児 | 6:1 | 変更なし |
3歳児 | 15:1 | 2024年度に改正済み(旧20:1) |
4・5歳児 | 25:1 | 2024年度に改正済み(旧30:1) |
小規模保育事業の配置基準
小規模保育事業は、A型・B型・C型によって配置基準が異なります。
種類 | 配置基準(園児数:保育士数) | 資格要件 |
A型 | 0歳児3:1、1・2歳児6:1(加算で1歳児5:1) | 全員保育士資格が必要 |
B型 | 0歳児3:1、1・2歳児6:1(加算で1歳児5:1) | 1/2以上が保育士資格必要 |
C型 | 0~2歳児3:1(補助者がいる場合は子ども5人に対して保育者2人) | 家庭的保育者の資格が必要 |
※小規模保育事業(定員6~19名)では、上記配置基準に加えて1名の追加配置が必要です。
家庭的保育事業の配置基準
家庭的保育事業(通称「保育ママ」)は、保育者の自宅やマンションの一室などの家庭的な環境で少人数の子どもを保育する事業です。定員は5名以下と小規模で、主に0歳から2歳までの乳幼児を対象としています。
子どもの年齢 | 配置基準(園児数:保育士数) | 補助者がいる場合 |
0~2歳児 | 子ども3人に対して保育者1人 | 子ども5人に対して保育者2人 |
事業所内保育事業の配置基準
事業所内保育事業の配置基準は、定員規模によって異なります。
なお、受け入れる子どもの年齢は一般的に0~2歳です。
定員 | 配置基準(園児数:保育士数) | 備考 |
20名以上 | 認可保育園と同じ | 0歳児3:1、1歳児6:1(加算で5:1)、2歳児6:1 |
19名以下 | 認可保育園の基準+1名 | 小規模保育事業A・Bと同じ |
居宅訪問型保育事業の配置基準
居宅訪問型保育事業は、保育士や保育者が利用者の自宅を訪問して、1対1で保育サービスを提供する事業形態です。主に、待機児童対策や障がいを持つ子ども、疾患を抱える子どもなど、集団保育が難しい子どもへの保育を目的としています。
居宅訪問型保育事業の配置基準は以下の通りです。
なお、受け入れる子どもの年齢は一般的に0~2歳です。
子どもの年齢 | 配置基準(園児数:保育士数) | 備考 |
0~2歳児 | 保育者1人に対し子ども1人 | 1対1での保育が基本 |
※居宅訪問型保育事業は他の保育サービスと異なり、基本的に1対1の保育形態をとるため、複数の子どもを同時に保育することはありません。
保育士配置基準の計算方法と具体例
保育施設で必要な保育士の人数を算出する際の基本的な計算方法を解説します。配置基準の計算は、年齢ごとの児童数を配置基準で割り、小数点以下を切り上げて合計する方法が一般的です。
計算式:各年齢の在園児数 ÷ 配置基準の定員数 = 保育士の必要人数 (小数点以下は切り上げ)
以下の定員の認可保育園を例に、必要な保育士数を計算してみましょう。
園児数の前提条件:
- 0歳児:6人
- 1歳児:12人
- 2歳児:18人
- 3歳児:20人
- 4歳児:25人
- 5歳児:25人
2025年度の配置基準に基づく計算:
- 0歳児:6人 ÷ 3人 = 2人(保育士)
- 1歳児:12人 ÷ 6人 = 2人(保育士)
※1歳児配置改善加算を利用する場合:12人 ÷ 5人 = 2.4人 → 3人(保育士)
- 2歳児:18人 ÷ 6人 = 3人(保育士)
- 3歳児:20人 ÷ 15人 = 1.33人 → 2人(保育士)
- 4歳児:25人 ÷ 25人 = 1人(保育士)
- 5歳児:25人 ÷ 25人 = 1人(保育士)
通常の配置基準では必要保育士数は合計11人ですが、1歳児配置改善加算を利用すると12人必要になります。この追加1人分の人件費相当額が加算として給付されます。
なお、朝夕の延長保育時間帯には、上記とは別に最低2名以上の保育士配置が必要です。
また、自治体によっては独自に上乗せ基準を設けている場合がありますので、所在地の自治体の基準も確認しましょう。
配置基準違反のリスクと監査のポイント
保育士配置基準を満たさない場合、法令違反となり、さまざまなリスクが生じます。配置基準違反が発覚した場合、以下のような段階的な対応が行われます。
段階1:指導監査
認可保育園では、数年に1度、行政による監査が実施されます。この監査で配置基準違反が発覚すると、「特別監査」が行われることがあります。指摘を受けた場合は、改善計画書の提出が求められます。
段階2:改善勧告
監査後、約1か月で文書による「改善指導」が行われます。この段階でも改善が見られない場合、正式な「改善勧告」が出されることがあります。
段階3:認可の取り消し・事業の停止命令
意図的な違反や長期にわたって改善が見られない場合、最終的には「認可の取り消し」や「事業の停止命令」というペナルティが発生する可能性があります。
配置基準違反は子どもの安全や保育の質に直結する問題であり、万が一事故などが発生した場合、より重いペナルティや賠償責任を問われる可能性もあります。また、保護者の信頼を失うことで、園児の減少や風評被害などの二次的な影響も考えられます。 保育施設の運営者は、配置基準を常に満たすための人員確保と適切なシフト管理を行うことが重要です。また、急な欠勤や退職に備えて、代替保育士の確保や連携体制の構築など、リスク管理の取り組みも必要です。
保育士配置基準改善の今後の展望
2025年度に導入される1歳児配置改善加算は、将来的な配置基準そのものの改善に向けた第一歩と位置づけられています。ここでは、今後の展望について考えてみます。
加算から最低基準への移行可能性
こども未来戦略では、「加速化プラン期間中の早期に6対1から5対1への改善を進める」としていることから、現在の加算措置は過渡期の対応と考えられます。1歳児配置改善加算を利用する施設が増え、5:1配置が一般的になれば、将来的には最低基準自体が「5:1」に改正される可能性があります。
実際、2024年度の4・5歳児と3歳児の配置基準改正も、当初は加算措置として始まり、徐々に最低基準の改正につながった経緯があります。
保育士確保の課題
配置基準改善の最大の課題は、保育士の確保です。2025年度の1歳児配置改善加算の条件に「平均経験年数10年以上」という厳しい要件が設けられているのも、保育士不足を考慮したものと言えます。
保育士の処遇改善や働き方改革、業務効率化などを総合的に進めていくことで、保育現場の労働環境を改善し、保育士の確保・定着につなげていくことが重要です。
こども家庭庁は2025年度予算案に保育士の処遇改善として1607億円を計上しており、配置基準改善と処遇改善を両輪で進める方針です。
自治体独自の上乗せ基準
東京都や横浜市など、一部の自治体では国の基準より手厚い独自の配置基準を設けています。今後も、地域の実情に合わせた自治体独自の上乗せ基準の導入や拡充が進む可能性があります。
保育施設の運営者は、国の基準だけでなく、所在地の自治体の基準や加算制度も確認し、積極的に活用することで、より質の高い保育環境づくりを目指すことが大切です。
ICT化の一層の推進
1歳児配置改善加算の条件にICT活用が含まれているように、今後も保育現場のICT化は重要なテーマとなるでしょう。業務効率化により保育士の負担を軽減し、本来の保育業務に集中できる環境づくりが進むことが期待されます。
保育士配置基準の改善に役立つ「採用担当らいん君」
2025年度の1歳児配置改善加算の条件として、「処遇改善加算の取得」や「職員の平均経験年数10年以上」が挙げられており、保育士の確保・定着が重要な課題となっています。
保育士不足が深刻化する中、効率的な採用活動が施設運営の鍵を握っています。
「採用担当らいん君」は、保育施設の採用担当者の負担を軽減する画期的なLINE採用支援ツールです。採用に関する問い合わせ対応を24時間自動化し、応募者とのやり取りをスムーズに行えます。配置基準改善に向けた保育士確保の強い味方として、多くの保育施設で導入されています。
このサービスの特徴は、
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詳しくは 採用担当らいん君公式サイト をご覧ください。
配置基準改善と同時に、採用活動の効率化も進めていきましょう。

【執筆者情報】
上杉 功(うえすぎ いさお)株式会社チポーレ代表取締役。
保育士の採用や園児集客をサポートするサービスを展開中。保育士や園長の負担軽減と保育の質の向上を目指し、現場に即したサービスや情報発信を日々行っております。